2017/03/18

あるお母さんが真剣な顔をして相談にいらっしゃいました。

お話を聞いていると、娘さんが非行に走ってしまって、事件を起こして鉄格子の中にしばらく入れられることになって「来月に出所してくるんです!」と複雑な表情をされていました。

 

また、あの子が家に帰ってきて暴れちゃったりしたら、どうしたらいいんでしょう?

 

あの子が悪い人たちとまた付き合い始めちゃったら私はなんと言ってあげたらいいんでしょう?

 

近所の人たちの冷たい目からあの子をどう守ってあげたらいいんでしょう?

 

そんな質問を当時、カウンセラーなりたてホヤホヤの私に聞かれて、内心「どうしたらいいんだろう〜!」と叫んでいました。

 

ボスに相談すると「両親がそんな心配をしてる限り、繰り返すね!」とだけ(ひえ〜!確かにそうですけど!何かお言葉を!)。

 

両親は「自分たちの育て方の問題で、子供がこんな状態になってしまった」と自分たちを責めて涙を流していらっしゃいました。

 

こんなに両親が悲しんでいらっしゃったら、帰ってきた子供は「自分のせいで両親はこんなに悲しんでいる!」となるのですが、それが「両親は自分のことを責めている!」と受け取ってしまうから、また「そんなに責めるんだったらグレてやる〜!」となってしまう可能性が高くなります(もうすでにグレてるやろ〜!)。

 

万が一、両親に笑顔で「おかえりなさい〜!」と娘をウェルカムな演技をさせても、近所の冷たい視線とのギャップで「やっぱり家に居づらいから元の身体にお絵描きがしてある人のところに行こう!」となってしまう可能性も考えられます。

 

両親の気持ちも近所の人の気持ちも一発で変えられる方法ってあるのかな?と考えてみても全く思いつきません。

 

「こうなったら、お師匠さんの催眠を使うしかないでしょ!」となったんです。

 

そこで、お母さんの話に耳を傾けます。

 

「ガラス越しに娘さんの姿が見えていたんですね」と「見て!」を入れます。

 

そして「娘さんの声をインターフォンを通して聞いていらっしゃったんですね」と「聞いて!」を入れます。

 

そんな時に「面会室の椅子の感覚を感じていらっしゃったんですね」と「感じて!」を入れていきます。

 

 

「娘さんの髪の色が見えていましたね」。

 

そして「娘さんがお母さんに謝罪する声を聞いていたんですね」と。

 

さらに「手ではカウンターの冷たい感触を感じていたんですね」と感じていきます。

 

すると、「見て!」、「聞いて!」そして「感じて!」を繰り返しているだけで私の頭は真っ白になって、一つのストーリーが頭の中で展開していきます。

 

それは、もうすぐ春なのに、まだ雪が残っている道の傍らに土がもっこり盛り上がっています。

 

そんな盛り上がった土を眺めながら、風の音を聞いています。

 

そして、その風が感じさせてくれる寒さの向こうに春の訪れを感じたんです。

 

そう、もっこり盛り上がっている土の向こうを見ていたら、その犯人は福寿草の芽だったんです。

 

その福寿草は冷たい風が吹き付ける音を聞きながら、芽を出していきます。

 

そして、太陽の光を感じて、綺麗なあの黄色い花を咲かせるんです。

 

でも、太陽の光がが雲で遮られた時に、その花はしぼんでしまう姿が目に入ってきます。

 

でも、再び太陽が当たって雪解けの水が流れる音を聞いていると、いつの間にかしぼんだはずの花が咲き誇るんです。

 

そう!しぼんでしまったと思っていたのが、花がしぼんだり開いたりを繰り返すことで温かい感覚を失わないようにしていたなんてことに、気がつかせてくれたんです。

 

そんな黄色い花を見ていたら、フッと引き出しにしまっていた、黄色いハンカチのことを思い出したんです。

 

そう!あの思い出が詰まった黄色いハンカチが引き出しを開ける音とともに取り出されていく姿が。

 

そして、その思い出のハンカチに暖かい太陽の光を当ててあげたくなったんです。

 

長年引き出しにしまってあったものですから、しっかりと洗濯ばさみで止めて、そして、私はそのハンカチが風で揺れる音を聞いてみたくなったんです。

 

ハンカチが風になびきながら、私はそれを眺めているとある感覚を思い出しているんです。

 

そんなストーリーが頭に浮かんできたことを、目の前に座っていらっしゃったお母さんにお話をしていたら、お母さんは「そうなんですね!」といってある表情を浮かべて帰っていきました。

 

面接室に一人残された私は「無意識さん!あれって”幸福の黄色いハンカチ”ですよね!」と文句を言っていました(幸福の黄色いハンカチは私の好きな俳優さんが出ている映画です)。

 

無意識さんが、あんなベタな話の展開をするから、途中で笑いたくなったじゃないですか!と文句を垂れます(ベタってありきたりで面白くないという意味。無意識さんに失礼やろ!)。

 

あのお母さんがあの映画を見ていたら絶対に途中で笑っていたと思います。

それを無意識さんが知ってか知らなくてか、あんなストーリー。

 

しばらくしてお母さんがやってきて「先生!ありがとうございました!」とめちゃくちゃ素敵な笑顔でおっしゃってくださいました(すみません、私は全く何もやってませんけど!)。

 

あれから帰ったら、なんだか近所の人に「うちの娘が鉄格子から出所してくるんです!いつも見守ってくださってありがとうございます!」と挨拶に行ったんです、と教えてくださいました。

そしたら、近所の人は「よかったね〜!」と優しく声をかけてくださったんです、と。

 

そしたら、私たち夫婦もなんか吹っ切れちゃって、出所の日がものすごく楽しみになったんです。

 

当日は黄色いハンカチは干さなかったんですが、黄色いハンカチをポケットに入れて娘を迎えたんです。

 

そして、娘を黙って抱きしめることができて、一緒に涙を流せたんです。

 

そんなお話をしてくださって、お母さんは嬉しそうに帰って行かれました。

 

 

お母さんが帰ったあとに、素敵な余韻に浸りながら「なんだ〜!黄色いハンカチを干してくれたと思っていたのに〜!」と独り言。

 

そこかい!ルーキーの俺!(ルーキーとは初心者のことです)。

 

 

 

 

 

 


2017/03/23


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